INTERVIEW
GERNOT LINDNER

 

スターリングシルバーの美しい質感、使用を続けることで生まれる味わい、小ぶりで美しいレンズシェイプ、そして〈GERNOT LINDNER / ゲルノット・リンドナー〉を掛けること自体がもたらす高揚感。それらはもちろんのこと、お客様に手渡すまでに仕上がっていく過程までもが、このブランドの魅力を強く感じさせてくれる。デザイナーであり、マイスター(職人)であり、アンティーク眼鏡の蒐集家でもあるゲルノット氏の背景が、その一本一本に深く影響しているのだろう。新たに追加された〈series 700〉そしてスターリングシルバーとバッファローホーンを組み合わせた〈series Buffalo Horn〉が加わり、コレクションはさらなる進化を遂げた。

 

2026年1月9日〜12日の4日間、The PARKSIDE ROOMで行う【GERNOT LINDNER Complete Collection Ordering Fair 2026】での新作披露を前に、ゲルノット・リンドナー氏にいくつか質問を投げかけてみた。眼鏡との出会い、新作に込めた思い、そして彼が考える“美しい眼鏡”について——淡々と語られる言葉の端々から、彼の美意識が垣間見えた。

 

 

*2025年10月
Text|Shun Igarashi(The PARKSIDE ROOM)

 

 

 

 

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Designer:Gernot Lindner(ゲルノット・リンドナー)
1941年、オーストリア・インスブルック生まれ。アメリカンオプティカル社にて製造管理・教育担当として約20年にわたり勤務。その後、1990年に49歳でLunorを創業し、クラシックアイウェアの確固たる地位を築く。2012年に一度は業界を引退するも、かねてより情熱を抱いていた「銀製眼鏡」への想いが募り、2017年、自身の名を冠したブランド〈GERNOT LINDNER / ゲルノット・リンドナー〉を発表する。

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・初めて眼鏡を手にしたのはいつの頃ですか?

初めて眼鏡を手にしたのは、祖母からコレクションとして譲り受けた1955年ことでした。当時、私は眼鏡技師としての修行を始めたばかりで、そこからマイスター試験まで10年に及ぶ徒弟期間が続きました。あの眼鏡は、私にとって”眼鏡の美しさ”を知るきっかけになったと思います。

 

 

・ご自身で眼鏡を作りたいと思うようになったのは、どんな体験がきっかけでしたか?
若い頃、ミュンヘンのローデンストック社で研修生として働く機会がありました。その仕事がとても楽しく、自分自身の眼鏡コレクションを作りたいという意欲が芽生えたのです。

 

 

・眼鏡の他に「美しい」と感じるものはありますか?
私は古くて上質な筆記具を美しいと感じます。それらもまたコレクションにふさわしい品です。ペンケースの素材には、金や銀など、眼鏡にも使われる素材が用いられています。

 

 

・日々の暮らしの中で、大切にしていることはありますか?
毎日、きちんとした食卓で食事を楽しむことを大切にしています。良い食器やカトラリーを使うと、食事がより豊かに感じられるのです。パートナーのバーバラは料理がとても上手です。

 

 

 

 

 

 

14歳でコレクションとしての眼鏡を受け継いだことから、古い眼鏡の持つ美しさに魅了され、アンティークの蒐集を始めたゲルノット氏。マイスターになるため、眼鏡技師として修行をしながら、蚤の市を周り蒐集を続けた。70年以上かけて集めたコレクションの数は3000本を超える。

 

 

地元オーストリア インスブルックに戻り、アルプスの山嶺に住む彼は、2017年に〈GERNOT LINDNER / ゲルノット・リンドナー〉を立ち上げ、84歳になった今もなお眼鏡への情熱は衰えることなく新作を発表する。

 

 

 

〈series 700〉

 

〈series Buffalo Horn〉

 

 

・新たに発表された〈series 700〉の元となったデザインはありますか?
series 700は、およそ1940年頃のデザインに基づいており、当時アメリカで高品質な男性向けメタルフレームとして生産されていたものに似ています。ただし、このフレームは特定の時代に属すると言い切ることはできません。どの時代にも通じる普遍的な美を備えていると感じています。

 

 

・スターリングシルバーとバッファローホーンの組み合わせにはどんな想いがあったのでしょうか?
スターリングシルバーとバッファローホーンはどちらも価値のある天然素材であり、互いに非常に相性が良いのです。時とともに素材特有の表情の変化が見られ、使うほどに味わいが深まります。

 

 

 

 

 

 

・職人であり、デザイナーであり、蒐集家でもあるあなたが思うアンティーク眼鏡の魅力はどこにあるのでしょう?
アンティークコレクションは私の基盤であり、フレームの魅力を生み出す源です。アンティークアイウェアには、個性があり、細部へのこだわりが特に際立っています。私は世界中の光学業界の同僚たちにも、その歴史を学ぶことを強くおすすめします。

 

 

 

 

 

 

 

 

・ 眼鏡をデザインする上で、最も大切にしていることは何ですか?
フレームの比率(プロポーション)を正確かつ美しく設計することが大切だと思います。鼻幅、頬の高さ、レンズサイズのバランスが取れていることが理想です。レンズが小さい場合は、鼻幅を少し広めにするべきです。個人的には、アンティーク眼鏡のような小ぶりなフレームに特に魅力を感じます。

 

 

・眼鏡を作るにあたって、これから挑戦してみたいことがあれば教えてください。
時代の感覚は、アイウェアファッションを含め、変化を求めています。私は、日本人の鼻に合う眼鏡のフィット感を改善したいと考えています。眼鏡は、美しさと快適さを兼ね備えた、審美的にも魅力的なものであるべきです。

 

 

・最後にあなたにとって、“美しい眼鏡”とはどのようなものでしょうか。
私は、小さくて丸いフレームが最も優れていると思います。眼鏡の歴史はおよそ800年ありますが、そのうち550年もの間、人々は丸いフレームをかけてきました。それは、時代が移ろっても変わらないもので、私の思う”美しい眼鏡”なのです。

 

 

 

淡々とした返答は、彼の職人気質な人柄が映し出され、それと同時に強い信念と揺るぎない美学を持ち、眼鏡に向き合っているということが感じられた。〈GERNOT LINDNER / ゲルノット・リンドナー〉のプロダクトに表れる細部までこだわり抜かれた“美しさ”はこの強い思いがあってこそ生まれるのかもしれない。以前届いたメールに追記されていた一文を思い出した。この文に、彼の大切にしたい思いが凝縮されているのだと思う。アンティークの時代の眼鏡のように、長い間翔され、時に受け継がれること。」それこそが〈GERNOT LINDNER〉が追い求める“美しさ”なのだろう。

 

 

 

Das zur Information –
auch wurden die Brillen seinerzeit sehr lange getragen und auch weiter
– vererbt.

 

(参考までに:眼鏡は長い間使用され、受け継がれることもありました。)

 

 

 

◼︎EVENT

GERNOT LINDNER Complete Collection Ordering Fair 2026
2026.1.9 FRI – 1.12 MON
at The PARKSIDE ROOM

 

インタビューの中で紹介した新作をはじめ、国内に揃うすべてのサンプルを一堂に集めたオーダー会を上記日程にて開催いたします。スターリングシルバーならではの奥行きある質感、バッファローホーンとの新たな組み合わせ、そしてseries 700の新作を、実際に手に取りながらオーダーいただける特別な機会です。ぜひ、この機会に、〈GERNOT LINDNER〉の世界観をご体感ください。